●2017年5月末日用事務所だより
第1 税務・会計・法務情報
《1》住宅取得資金贈与の特例はお勧めか
「住宅取得資金贈与の特例を使って節税しましょう」
このフレーズは、大変よく聞きます。
しかし、私からすれば、基本「大嘘」です。
バブルの頃と違って、今、土地は、値上がりする資産でしょうか。
むしろ、場所によっては、値下がりする資産です。
更に、建物はどうでしょうか。
基本、将来、価値が下がっていく資産です。
値下がりする資産を生前贈与することは、税務上得か。
普通は、損のはずです。
【時間経過と不動産の価値】
現時点 将来
相続開始時
───×─────────────×───────→
┌───┐
│土地 ├────────→ 価格上昇は
└───┘ 考えにくい
┌───┐
│建物 ├────────→ 減価により
└───┘ 価値は下落
┌────────────────────────────┐
│基本、子供用の自宅は、将来の相続で移転すべきではないか。│
└────────────────────────────┘
私は、そのように考えています。
むしろ、若い頃に、家を建てて、将来、リフォームしようという場合。
改修するから、あるいは二世帯にするからと、親に資金を出して貰うと。
┌──────────────────────────┐
│所有者の違う建物に、返金されない増改築代金を出せば。│
│それは、贈与になってしまいます。 │
└──────────────────────────┘
なんと、贈与税の心配をしなくてはならなくなるのです。
一応、回避方法がなくはありませんが、出血は避けられません。
とすれば、むしろ、最初から、親が自分の土地に建物を建てて。
そこに、タダで住まわせておいて、将来、相続で移転する方が良いでしょう。
というのが、上記の意見の根拠です。
移転時の価格は、当然、購入時の価格と比較すると、下落しています。
また、リフォーム費用は、自分の建物に自分が出すだけです。
場合によっては、将来の「かすがい」の効果を生じることすらあります。
正直、土地代金や建築資金を贈与して貰っても、感謝はその一瞬です。
将来を考えて、親の家に住まわせて貰っていれば、感謝は続くでしょう。
「息子のために家を建ててやりたい」
「娘が一戸建てに住むのを支援してやりたい」
その気持ちをないがしろにするつもりは、到底ありません。
しかし、自分の所有であれば、固定資産税を払ってやっても問題ありませんね。
これが、息子や娘の家であれば、それは贈与になってしまいます。
「将来の相続税がかからないようにしたい」
気持ちは分かりますが、結果的に、むしろ大きな税負担になるかもしれません。
今の基礎控除額を考えて贈与しても、将来は、また変わる可能性もあります。
ということで、私は、この特例は基本、「お勧めしません」とお伝えしています。
余裕あれば、
┌─────────────────────────┐
│お父さんやお母さんが、家を建てて、住まわせてあげる│
└─────────────────────────┘
のが正解でしょう。
なお、この特例には、相続時精算課税制度というオプションを付けられます。
そちらも、落とし穴の多い制度ですが、それはまた次回の説明とさせて頂きます。
《2》子のない夫婦が書くべき遺言
最近、ある方から聞いた話です。
父が死亡して、母が残された。
自分たち子供は、もう十分財産があるから。
相続は放棄しよう、家庭裁判所で手続きしようと兄に言われたと。
これ、放棄すると、何が起きるかですが。
子供が全員相続放棄して、父の親など尊属もいなかったとすれば。
なんと、父の兄弟姉妹が、法定相続人に登場してしまいます。
母に集中させようとしたのが、完全に徒になるのです。
最初から、
┌─────────────────────────┐
│妻に全財産を相続させる遺言を書いておくべきだった。│
└─────────────────────────┘
教訓としては、そのようになります。
その意味で、
┌─────────────────┐
│子のいない夫婦は、年齢に関係なく、│
│お互いに、遺言を書いておく │
└─────────────────┘
ことがお勧めになります。
遺言は、後で撤回できますが。
何もなければ、相続人全員での遺産分割協議が必要です。
専門家に依頼するなら、実務上、公正証書遺言に限りますが。
上記の趣旨なら、下記がサンプルになります。
【配偶者に全てを相続させる自筆証書遺言の例】
┌─────────────────┐
│ 遺言書 │
│ │
│私の全財産は妻マスコに相続させる。│
│平成29年5月31日 │
│ │
│広島県福山市木之庄町5-2-4 │
│濱田富雄 印 │
└─────────────────┘
なお、当初の例ですが、相続放棄をするのではなく。
貰うべき遺産をゼロにする遺産分割協議をするのが正解だったことになります。
「相続放棄」という言葉は、世の中で誤解されている言葉の1つです。
ご注意頂ければと思います。
《3》法定相続情報証明制度が始まりました
法務局による新サービス提供が開始されました。
「平成29年5月29日(月)から,全国の登記所(法務局)において,各種相続手続に利用することができる「法定相続情報証明制度」が始まります。 」(法務省)
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00284.html
△
法務局に法定相続人に関する情報を一覧図にした「法定相続情報一覧図」の保管を申し出ることにより、以後5年間、無料で法務局の証明がある法定相続情報一覧図の写し(法定相続情報証明)の交付を受けることができるようになりました。
(新しい相続手続「法定相続情報証明制度」(日本司法書士会連合会))
http://www.shiho-shoshi.or.jp/html/hoteisozoku/index.html
▽
ただし、下記でも「可能性があります」とあるように、まだ、法務局以外は、手続きに対応するとのアナウンスがありません。
△
また、相続登記以外の次のような場合にも法定相続情報証明を利用すれば、スムーズに手続を行える可能性があります。
①預貯金の相続手続 ②保険金の請求、保険の名義変更手続 ③有価証券の名義変更手続
(出典同じ)
▽
金融機関の対応については、大手を除けば、後手に回るとの予想もあります。
今後の進展を見守りたいところです。
第2 研修会・執筆情報
《1》外部研修会情報
現在のところ予定はありません。
《2》執筆情報
1)税務通信3456号(2017年05月08日)に実例から学ぶ税務の核心 <第9回>が掲載されました。
いつもの大阪勉強会グループによる執筆で、内容は、「最近の事業承継スキーム報道を読み解く③ 総則6項による否認事案(その2:キーエンス事案)」となっています。税務通信の人気記事ランキングにも入っているようです。
第3 PC関係
《1》ランサムウエアが蔓延しています、ご注意下さい
弊所への発信にも、必ず、件名やお名前をお願いします。
ウイルスメールとして、削除してしまう可能性があります。
1)「出張の件」「役員表」…仕事のメール?実は攻撃 今日から注意を
2017.5.15 08:42更新
【サイバー攻撃】
「出張の件」「役員表」…仕事のメール?実は攻撃 今日から注意を
(略)
タイトルや本文に「米国出張の件で追加情報」「最新の役員表です」などいかにも業務らしい表現をしており、注意が必要だ。
(略)
増えているのは「先日の商品発表会について質問」「研究会入会について」「作業日報を送ります」などと、具体的な業務に関係するような内容。実際の企業の情報が漏れ、悪用されている可能性もある。
送信元のアドレスの欄に、受信者の所属先と関連する実在の組織名が表示され、本物のメールと誤信させるように仕組まれていた。
(略)
http://www.sankei.com/affairs/news/170515/afr1705150004-n1.html
2)ネット切断、身代金「払わないで」…感染の場合
2017年05月15日 13時05分
「ランサム(身代金)ウェア」と呼ばれるウイルスによる世界的なサイバー攻撃を受け
(略)
IPAの担当者は「不審なメールは開かずにすぐに削除して」と指摘。ウイルス対策ソフトを最新版に更新して添付ファイルを検査してから開くのが望ましいという。
万が一、感染した場合はどうすればいいのか。1台が感染すれば、社内のネットワークなどを通じて被害が拡散する可能性があるため、すぐにネットから切断するのが鉄則だ。
身代金については「絶対に払わないで」(担当者)とする。支払い時に攻撃者に情報を提供してしまうことになり、攻撃が繰り返される可能性があるためだ。
http://www.yomiuri.co.jp/national/20170515-OYT1T50031.html?from=ytop_top
第4 その他
1)郵便はがきの料金が改訂されています
2017年6月1日(木)から郵便はがきの料金等を変更させていただきます。
http://www.post.japanpost.jp/service/fee_change/index.html