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●2017年01月末日用事務所だより


●2017年01月末日用事務所だより

第1 税務・会計・法務情報

 《1》医療費税制の特例について(平成28年度税制改正)

 平成29年度より、従来の医療費税制の特例として、セルフメディケーション税制がスタートしています(平成28年度税制改正で創設)。この制度は、健康診断の受診を前提として、スイッチOTC医薬品を購入している場合、従来の医療費控除よりも、金額基準のハードルを大きく下げるものです。

 従って、従来、少額の医療費しかないから医療費控除が使えないという方であっても、本制度の対象になる場合があります。ただし、注意点が幾つかあります。

1)従来の医療費控除と本特例はどちらか一方の選択です

┌──────┐  ┌───────────┐
│医療費制度 │  │セルフメディケーション│
│(従来制度)│  │税制(新制度) │
└──────┘ └───────────┘
        ▲
      どちらか一方を選んだら
      もう一方は適用できない!

 従来制度と新制度の両取りはできません。
 そして、新制度は、足切りが1万2千円と低額であるものの、所得控除を受けられる上限は8万8千円となります。従来制度の所得控除は最大200万円なので、なんと10分の1以下です。

┌──────┐  ┌───────────┐
│医療費制度 │  │セルフメディケーション│
│(従来制度)│  │税制(新制度) │
└──────┘ └───────────┘
   ↓          ↓

 足切りは高いが    足切りは低いが
 限度額が大きい    限度額も小さい

 つまり、
┌───────────────────┐
│既に、毎年、従来からの医療費控除制度を│
│利用されている方には、新制度は無視して│
│よいものだ │
└───────────────────┘
と言えます。

 逆に、今まで、医療費控除の足切り基準である所得金額の5%(所得200万円以上は、10万円)を超える医療費のなかった方は、利用の可能性があります。

 とりあえず、医療費の領収証を保管しておいて、1年の最後に判断するというのは、これまでと変わらないことになります。

2)新制度は、健康診断を受けていないと使えません

 申告する方が一定の健康診断を受診していない場合には、新制度は使えません。

  申告する方が、いずれかの
┌─健康診断等を受けている必要あり┐
│ │
│・メタボ健診(特定健康診査) │
│・予防接種 │
│・事業主健診(定期健康診断) │
│・健康診査 │
│・がん検診 │
└────────────────┘

 職場での定期健康診断でもよいわけですが、逆に言えば、全額自己負担で高額の人間ドックを受けてもこれは該当しないことになります。
┌──────┐  ┌───────────┐
│医療費制度 │  │セルフメディケーション│
│(従来制度)│  │税制(新制度) │
└──────┘ └───────────┘
   ↓          ↓

 健康診断の     一定の健康診断を
 縛りはない     申告する人が受け
           ていないと
           使えない

 ちなみに、健康診断費用は、医療費控除の対象にならないのは、従来通りです。

3)新制度の対象となる医薬品は、限定されています

 スイッチOTCと呼ばれる、薬局窓口やドラッグストアで販売している一般医薬品のうち厚労省のサイトでリストに掲載されたものだけが対象です。現在販売しているもののパッケージには、対象品である旨のマーク表示があります。

 そのため、なぜこれはOKで、なぜこれはダメなのという話が生じます。例えば、「ベンザブロックは、青色や銀色はOKなのに、黄色は対象外」となっています。

┌──────┐  ┌───────────┐
│医療費制度 │  │セルフメディケーション│
│(従来制度)│  │税制(新制度) │
└──────┘ └───────────┘
   ↓          ↓

 対象の医薬品    対象の医薬品は
 は一般的      スイッチOTC
           で、リストに
           あるものだけ

 弊所で確定申告を行う場合に、この特例対象になるかどうかを全て確認するのは、実務的には不可能と考えております。★仮に弊所に依頼される場合は、必要な明細をご自身で作成された時にだけ本特例の対象とします☆ので、ご容赦ください。

 どうかご協力とご理解をよろしくお願い申し上げます。

 《2》医療機関の方々が行うべきセルフメディケーション税制への対応

 上記《1》で記載したように、個人が医療費控除の特例であるセルフメディケーション税制を受けるには、一定の健康診断や予防接種を受けていることが前提になります。
┌─────────────────────┐
│よって、健康診断等の受診を証明する書類を、│
│確定申告時に添付または提示が必要です。 │
└─────────────────────┘
 そこで、医療機関の方々は、患者さんから、この問い合わせがあった際の対応を確認しておく必要があります。

1)インフルエンザの予防接種を受けた場合
┌────────────────────────┐
│予防接種の領収書(原本に限ります。以下同様です)│
│を提出すれば足ります。 │
└────────────────────────┘
 医療機関として、証明書を発行する必要はありません。
 領収書を紛失しないようにだけお伝え下さい。

 なお、
┌────────────────────┐
│予防接種済証の提出でも足りる取扱いです。│
└────────────────────┘

2)市町村のがん検診を受けた場合
┌──────────────────────┐
│この場合も、領収書又は結果通知表(の写し) │
│の提出で足ります。 │
└──────────────────────┘
 よって、医療機関側では、インフルエンザ予防接種の場合と、基本対応は同じです。

 なお、結果通知表の写しを提出する場合、検査結果部分を黒塗りして差し支えないとされています。

3)勤務先で実施される健康診断(定期健康診断(事業主健診))を受診している場合
┌─────────────────────────┐
│勤務先で実施される定期健康診断にかかる結果通知表に│
│「定期健康診断」という名称があるか、あるいは、 │
│「勤務先の名称」の記載があれば、この書類(の写し)│
│の提出で足ります。 │
└─────────────────────────┘
 提出時に、検査結果部分を黒塗りしてよいのは、2)と同様です。

 この場合も、医療機関側は、証明書を別途発行する必要がありません。

4)特定健康診査(メタボ健診)を受診している場合
┌───────────────────────────┐
│特定健康診査の領収書又は結果通知書に、 │
│「○市国民健康保険」など、保険者の名称記載がある場合、│
│その領収書又は結果通知書を提出すれば足りる │
└───────────────────────────┘
こととされています。

 この場合も、医療機関側は、証明書を別途発行する必要がありません。

5)健康診査
┌───────────────────────────┐
│健康診査の領収書又は結果通知書に、 │
│「○市国民健康保険」など、保険者の名称記載がある場合、│
│その領収書又は結果通知書を提出すれば足りる │
└───────────────────────────┘
こととされています。

 この場合も、医療機関側は、証明書を別途発行する必要がありません。

6)別途証明書を発行する必要がある場合

 このように、医療機関が証明書を発行する必要性はないことになります。

 しかし、
┌───────────────────────────┐
│単に保険者から補助を受けて「人間ドック」を受診する場合│
│等で、結果通知表に保険者や勤務先の名称記載がない場合が│
│あり得ます。 │
└───────────────────────────┘

 その場合については、
┌──────────────────────────┐
│厚生労働省が定める書式の証明書を「保険者」に発行して│
│貰う必要があります。 │
└──────────────────────────┘
 医療機関自身が発行するのではなく、保険者による発行ですので、患者さんが直接、各保険者に申し込んで頂く必要があります。

 このあたり、当分は現場での混乱が予測されます。
 本稿が、現場での対応の一助になれば幸いです。

参考)
(「特定一般用医薬品等購入費を支払った場合の医療費控除の特例(セルフメディケーション税制)」の創設に伴う証明の発行について(協力依頼)(厚生労働省健康局健康課長ほか 平成28年11月15日))

 《3》公的年金等の源泉徴収票の再発行依頼について

 公的年金等の源泉徴収票は、平成29年1月13日から19日にかけて、順次発送されているそうです。現時点で、まだ届いていないという方の中の場合、紛失を疑って頂いた方がよろしいかと思います。

 公的年金等の場合、源泉徴収票の再交付の受付は、電話で可能です。
┌──────────────────────────┐
│ねんきんダイヤル(0570-0501165もしくは03-6700-1165)│
└──────────────────────────┘
 再交付の申請の場合は、
 ┌───────────────────┐
 │・ご本人の基礎年金番号 │
 │・氏名 │
 │・生年月日 │
 │・住所 │
 │・電話をかけた人の氏名、本人との続柄 │
 │・電話番号 │
└───────────────────┘
 を確認するそうですので、予めご準備下さい。

 電話受付の場合、源泉徴収票発行には2週間程度を要し、日本年金機構に登録されている本人の住所宛に郵送されます。

 急ぐ場合には、近くの年金事務所または街角の年金相談センターでご相談ください。
 訪問時には、印鑑や年金手帳などの必要書類がありますので、予め下記URLなどでご確認下さい。

参考)
源泉徴収票の再交付の受付(日本年金機構)
http://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2016/1228.html

第2 研修会情報・執筆情報

 《1》関与先様向研修会

1)平成29年度税制改正速報セミナー

 平成29年16日月曜に、関与先向けの平成29年度改正税制速報セミナーを開催しました。
 《2》外部研修会情報

 現在のところ、特に予定はありません。

 《3》執筆情報

1)週間税務通信 月1回連載「実例から学ぶ税務の核心」を大阪勉強会のメンバー(濱田康宏・岡野訓・内藤忠大・白井一馬・村木慎吾)による座談会形式で行っています。

 1月では、下記が掲載されました。

<第4回>特別編 新春・平成29年度税制改正対談 ― 与党大綱を読んで ―
税務通信3440号(2017年01月09日)掲載